インプラントの利用が堅調に推移

次に、A博士は1988年から翌年にかけて鮫の軟骨をガンの治療と予防に使う可能性を探る、実際的な応用への道を開くことになる研究を開始した。 この研究では、40匹のネズミに人間の悪性黒色瞳の移植片を植えつけた。
つまり、これで転移を誘発しようというのだった。 対照群には鮫の軟骨は与えず、被験群には鮫の軟骨製剤(ある成分を抽出したものでなく、軟骨全体からつくった未精製製剤)を水に溶かして与えた。
これは体重1キロ当たりで換算すると、1日に21グラムの割合で与えることになる。 両脚の腫瘍の大きさを、28日間にわたって毎日測り続けた。

すると、軟骨を与えなかった対照群では21日で腫瘍の大きさが2倍になったのに対し、与えたグループは12日間で腫瘍は逆に17パーセント小さくなっていた。 最初の日に重さで36ミリグラムだった腫瘍が、21日目には30ミリグラムへと縮小していた。
A博士ら研究陣は驚嘆し、この結果はもっとも強力な抗ガン剤以上だと叫んだ。 しかも、抗ガン剤と違って鮫の軟骨は完全に無害で、好ましくない副作用はまったくない。
また、研究者たちが興味を持ったのは、鮫の軟骨を与えなかった対照群の動物で、腫瘍の増殖が、悪性黒色腫の移植片を移植してから2週間以上たってから起こり始めていたという事実であった。 この2週間のタイム・ラグは、腫瘍が増殖に必要な血管のネットワークをつくるのに要した時間を示唆するものであった。
そしてこのあと、さらに腫瘍は血管造成を促す物質を自分から出しているということも確かめられている。 このような結果に研究陣は驚き、次にやり方をすこし修正して再び実験を繰り返した。
次の実験では、移植片を植えつけてからすぐには鮫の軟骨を与えないで、2日たってから与えるというやり方をしてみた。 血管のネットワークをつくれという信号とPネットワークのつくり始めの間にタイム・ラグがあるので、鮫の軟骨の投与を48時間遅らせてもらったがその効果の違いはないはずだった。
最初の実験は、経口による鮫の軟骨の投与が腫瘍の増殖をストップさせることを明らかにした。 事実、腫瘍は1日目に41ミリグラムだったのが、12日目には27ミリグラムと40パーセント縮小しているのだった。
これに対し、鮫の軟骨を与えなかったグループでは、腫瘍は2倍から2倍半に増殖していた(腫瘍の大きさを示す数値でいうと、軟骨を与えなかったグループでは1.942だったのに対し、与えたグループではわずか0.593だった)。

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